デジタル化社会

今年に入り考え、2月上旬に纏めたアクションネタ。10年先を見据え、今何をやるべきか、20年先を見通し、今から何を準備すべきか。

残念ながら、現在のコロナ禍を想定できるすべもなく、纏めたものではあるが、4月に投稿した「原点回帰と日本ルネッサンスの処方箋」の続編として是非ご一読下さい。

 

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1 ネットワーク

 

先ずは、最下段のネットワークから説明することとしたい。
これから日本が目指す社会、それは迷う事なく、デジタル化社会である。そしてこの社会では、デジタル・インフラが起点となる。


2020年は5G元年ということもあり、先ずは5Gモバイルについておさらいしたい。
1980年代に開始されたモバイル通信技術は約10年に一度世代交代を遂げてきた。そして5Gは、超大容量、超低遅延、多端末接続が技術的に大きな特徴となっている。これらの特徴をより現実化するためには、マルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC: Multi-access Edge Computing)技術を提供するマイクロデータセンターの展開や、ネットワークスライシングと呼ばれる帯域保証技術がより重要度を増してくる。

 

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こうしたモバイル通信技術は世代を5Gまで上げてきたが、ここに来て大きな転換点をむかえている。一つ目は、徐々にではあるが利用可能な周波数帯域が拡張され、それに合わせて、その利用方式もFDD(Frequency Division Duplex 周波数分割送受信)に加えTDD(Time Division Duplex 時分割送受信)も採用することにより高速化を実現してきた。従来は下り回線をより高速にし、その一方で上り回線は速度を抑制するなどの手立てをしてきたが、5Gでは大容量アップロードも実現可能となる。二つ目は、5Gモバイルネットワークにおいて本格的に、設備のソフトウェア化が行われる。これによりネットワークスライシング技術が適用され、IoTの多数同時接続、ブロードバンド、超低遅延などの用途に応じた最適なサービスが提供可能となる。

 

携帯電話からスマートフォンへと進化したモバイルサービスは5G、6Gでは人のコミュニケーションから社会課題解決のためのサービスへと変遷することとなる。6Gにおいてもおそらく5Gに比し約10倍の超高速・大容量化が実現されるであろう。

 

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しかしながら、モバイルサービスに利用可能な周波数は無尽蔵にあるわけではない。モバイルはあくまでもアクセスネットワークとして利用し、地域、及び全国を結ぶ基幹ネットワークは大容量の光ファイバネットワークとして再整備することが極めて重要である。
コロナ禍の現在にあって、オンラインミーティングで映像を利用することは当然のようになったが、今後においてオンラインと名が付くもの、あるいは多様なサービスは少なくとも映像、画像が前提となる。さらには高精度、超高精度の要望が次から次へとなされるであろう。今現在の利用用途をベースとした物差しで決して論じてはいけない。前編でも述べたとおり、明治以降、日本のインフラ整備は、道路、鉄道が起点であった。これからのデジタル社会では、デジタルデータ・インフラが起点となる。本気で考えるなら、国をあげて取組みべき喫緊の課題と考える。

 

2 ネットビジネス


大容量化するネットワークの利用用途、その殆どは、IoTが主となる。Internet of Things、モノのインターネットである。様々なモノ(物)がインターネットに接続される。そして単に繋がるだけではなく、情報交換することにより相互に制御する仕組みへと発展していく。この発展形態は、いわゆるデジタル化、これは第1段階の見える化からはじまり、第2段階では、制御へ、そして、効率化、最適化、自動化へと発展していくことになる。
IoT進化の初期段階から重視すべきことが、IoTセキュリティである。従来は、クライアントサイドで人が直接、データを転送し、そのデータを中央のセンターにて全て集中監視、管理する手法で十分であったが、IoTの世界では、人を介さない形で大量のデータがやり取りされることになる。IoTデバイス側でのセキュリティをどのように維持していくかが極めて重要となる。そのデバイスもセンサーならともかく、様々なロボット、モビリティ、あるいは医療関係機器など、さらには、国内外を問わず様々な場所でデバイスは提供されていく。


こうした中で、我々の開発チームが全てのIoTデバイスに搭載可能となるセキュリティ・チップの開発を急いでいる。TCP/IPなどのネットワーク処理を完全ハードウェア化することを世界初で実現しようとしている。

 

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ネットワーク処理の完全ハードウェア化により、仮にデバイスがDDoSなどの攻撃を受けた際においても、デバイスのCPU影響を抑止できる。例えば、ロボット、モビリティなどのデバイス、製品では、場合によっては人命に関わる影響も危惧されるため、少なくとも、CPUの停止を防止しローカルでの機能動作を確保することが何はともあれ重要となる。
今年の夏頃までには試作機を完成させ、次のステップへと歩みを進めたいと考えている。

 

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この章では、もう一つ話をしたいと思う。
それは今から10年先で予測した、スマホ消滅(?)の話である。


先ずはスマートフォンに至る歴史をおさらいしておこう。
マイクロコンピューターの開発は、PC、パーソナルコンピューターを生み出した。そして、PCの操作は、当初のキーボードからマウスへ、やがてタッチパネルへとみるみる進化し、iPhoneiPadの登場で完成した。iPhoneが登場し随分時間が経過したように思うが、それはたかだか12年前のことである。もはや世界中の人々はスマホ無しでの生活はあり得ないところまできている、今後ともスマホはまだまだ利用され続けるだろうというのが大方の見方である。


しかしながら、自分が6年位前から言い続けている、脱スマホはこいつなのだ。

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ゲゲゲの鬼太郎の父親。眼球に体が付いた姿。身長9.9cm、体重33.25gと手のひらにのるサイズだが、非常に博学で知識面で鬼太郎たちをサポートすることが多い。


スマホは、利用者が指示したことに対しパッド上で表示する機能。確かにコミュニケーション機能としては大きく進化した。
しかし、脱スマホでは、秘書機能、音声認識・識別、予約、注文の代替機能など、まだまだこれから追加して欲しい機能はいくらでも出てくる。購入したと同時に、まるで子供でも育てるかのように、自分の一番身近な存在にて様々な機能を提供してくれる。AI機能により、自分の日常のルーティーンを理解しコミュニケーションをとってくれる。

だが、皆んなで同じく、この目玉親父をポケットに忍ばせようと言っているわけではない。外見、形状については、これからは3Dプリンターもあれば、ロボットの運動機能もどんどん進化する。まさに、自分だけのオンリーワンの相棒が存在するようになる。
と言っている、こうした間にも、世界では誰かが開発中であろう、いや、そう願いたい。


3 AI五感


ここでのタイトルとは裏腹に、AIの対極に位置するものは?


人間には3つの脳が存在すると言われている、ホンマかいな、。


いわゆる頭の脳はさておき、第2の脳は、腸とのこと。
確かに、イソギンチャク、なまこ、ミミズなど腸管生物は現存しており、遠くは生物の起源とされている。腸管生物には脳がないわけで、腸で考え、動くらしい。人の遺伝子は約2.2〜2.5万あると言われる一方で、腸内細菌の遺伝子数はその約100倍あるそうです。
セロトニンは、幸せホルモンとも呼ばれているが、このセロトニンは脳と腸で作られるが、その約9割はなんと腸で作られるということで驚きである。セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンをも生成することでも重要である。


次に第3の脳と言われるのが、皮膚。たたみ1畳分の大きさにして、重さは約3キロ。皮膚は人間にとって最大の臓器と言える。ケラチノサイトと呼ばれる細胞で構成された表皮には、圧力や温度、湿度以外に、可視光や音までも感知できる機能、脳のような情報発信機能をも備えている。自分と世界を区別する役割を果たす皮膚は心とつながりがあり、光や音からも無意識に影響を受けている可能性があると言われている。センサーの集合体である表皮は平均的に1ヶ月程度で新しく入れ替わるが、下界からのストレスが続くと、サイクルが乱れてバリア機能が落ち、免疫機能が低下することまで分かってきた。


話は変わるが、日本は世界一の発酵食品大国であり、その歴史は奈良時代から脈々と続く。
麹菌、乳酸菌、納豆菌、酵母菌、酢酸菌、、、
2006年に日本醸造学会が「国菌」に認定した麹菌、これは醤油、味噌、酒、鰹節などを生み出す。これらはみな、麹菌がもたらす日本独特の発酵食品である。
さらに言うならば、これら発酵食品は日本の地域、地域によりさらに製法が異なる。その地域の自然、風土、生活習慣などに深く根差したものである。


なんの話かと言うと、これからの日本はデジタル化社会、人間中心のAI社会、そして私見ではあるが、AIは先ずもって、人間の五感をサポートすべきであると考える。AIは人間の知能を補助、しかし、意識は人間のみに閉じて、と思う。
AIはその中でも、視覚、聴覚機能を優先すべきである。


とは言え、上記で触れたものは、AIの対極に位置するものかもしれない、そして、是非、みなさんと一緒にこういうものを探していきたい。
これこそ、人間自身が、主体的にかつ持続的に大事にしていかなければならないものである。
歴史・文化とテクノロジーの両輪で付加価値を上げていくアプローチでの日本型デジタル化社会!


4  競争優位&ビジネス戦略


私はこれまで約35年超に渡り通信キャリアでサラリーマンをしてきたが、振り返った時に、3つの教訓が浮かんだ。
先ずは1980年代後半以降の電気通信業界で何が起こったのかをまとめてみた。

 

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結果として、世界中の国際通信会社、長距離通信会社はものの見事に単独でのその姿を消した、勿論、日本も例外ではない。
生き残ったのは、地域通信プラス、モバイル通信会社である。

 

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これらの出来事から、私個人的としては、以下の3つに教訓を得た。何れもこれからのデジタル化社会をどのように作り上げるのか、あるいはビジネスをどのように変革していくのかと言う面でも大きな示唆となるに違いない。

 

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最後にもう一度、考えたい。
デジタル化って何か、何が起きるのか?
それは、通信サービスからインターネット、そして検索エンジンのポータル、さらには広告・ECビジネスへと、ネットの上で次から次へと重畳されていったOTT、Over The Topビジネスが、これからはサプラチェーン全体にサービスとして波及していく力を秘めていると言うことに他ならない。まさに、as a serviceそのものである。
いわゆるロングテール上で埋もれているものをクローズアップする。何故ならば、デジタル化によりまさにOTTの発想、限界費用ゼロあるいはミニマイズにより、いとも簡単にビジネスができる。日本の長い歴史の中で生まれたものを今こそ、クローズアップする絶好の機会と捉えるべきである
また、現在、まだまだ世界に向けて光を放っている日本が誇るテクノロジーを複数組み合わせて新たなサービスとして再生することもあり得るだろう。例えばMaaSはその典型のような気がする。鉄道、飛行機、その他のモビリティを組み合わせたサービスなど。しかし、その焦点はコスト面、エネルギー面での効率化を前提としつつ、利便性を向上させなければいけない。という具合に、デジタルを活躍させる場は次から次へといくらでも増えることになるだろう。


これまでの米国のGAFAの動きを見て、日本の経営者はすぐに追随したくなる。しかしながら、そのような芽は何一つ生まれていない。
とは言うものの、GAFAが席巻したプラットフォームビジネスは、広告、ECビジネスであり、GDPベースで見れば全体の7%程度である。これからはサプライチェーン全体にてどうするかということである。もう一つは、日本にはこれまでの歴史に根差した文化、伝統、芸能、衣食住に纏わる地産地消が山ほどあるではないか。プラットフォーム以前に、リアルなものこそ、よっぽど大事である。


プラットフォームを用い大規模ビジネスもいいだろうが、小さく育てるのも良いような気がする。それより、先ずはトライすることである、もっと言うならば失敗することである。こうした中で、小さいものをいくつも育て上げ、ビジネスとして結合し規模を大きくする、ある意味、こちらの方が日本人が得意なような気がする。


こうしたパラダイムシフトに必要とされる発想が、課題解決的な発想ではなく、まさに問題あるいは課題発見の発想である。こういう発想を多くの方々と持ち合いたい!