多様性の科学 マシュー・サイド著

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以下は本書からの抜粋


 イノベーションには、既存の延長線上にある斬新的イノベーションと新規の融合イノベーションの2つの種類がある。
融合は、アイデアの交配である。融合はいわば、異種交配であり、それまで関連のなかったアイデア同士を掛け合わせて、問題空間を広くカバーする手段である。古いものと新しいもの、既知のものと未知のもの、内と外、陰と陽の組み合わせである。


 企業が競合する場合、アイデアの良し悪しが勝敗を分ける要因の一つとなる。アイデアが劣った方が市場から去り、成功した企業はその後コピーされ、新たな市場が形成されていく。適切に機能する市場は成長の大きな原動力であり、集団脳の拡大に大きく寄与する。
しかし、アイデアや情報が組織の壁の内側だけに閉じ込められると、市場にとっても企業にとっても危険である。市場は活発に機能しなくなり、企業はイノベーションを起こせなくなる。
多様性の力、もしくはそれを軽視する危険性だ。組織や社会の今後の繁栄は、個人個人の違いをいかに活かせるかどうかにかかっている。賢明なリーダー、政策、建築デザイン、科学的探求などによって多様性をうまく活用できれば、組織にも社会にも大きな恩恵がもたらされるだろう。


 クールなテクノロジーを発明したいなら、頭が切れるより、社交的になった方がいい。
ホモサピエンスは一人一人の知能はネアンデルタール人に劣っていたとしても、集団の中で知恵やアイデアの蓄積はどんどん進み、やがて融合のイノベーションが起きた。
大きな脳が、優れた知恵やアイデアをもたらしたのではなく、優れた知恵やアイデアが、結果として、大きな脳をもたらす。
では、何故、チンパンジーや他の動物は人間のように進化しなかったのか?
それは、ゴリラは1家族単位で暮らし、集合知を形成する機会がない。オランウータンは単独で生活し、つがいになることはない。チンパンジーは、群れを成すものの、研究によれば、やはり幼い個体にとってのロールモデルは母親のみのようだ。


 仕事や私生活など日常に多様性を取り込むための3つのポイント
① 無意識のバイアス
・無意識のバイアスは、自分では気づかないうちに持っている偏見や固定観念である。
・「無意識のバイアス」を取り除く。例えば、男女、白人/黒人など、性別や人種などに関する無意識のバイアスによって理不尽にチャンスを奪われるケースが多々ある。
・それは、公正な社会に向けての第一歩であり、同時に集合知の高い社会に向けての第一歩でもある。
② 陰の理事会
・最先端の組織が多様性を活用するもう一つの方法が、陰の理事会である。
・重要な戦略や決断について、年功序列の壁を崩す意味合いがある。異なる世代に育てば文化的な背景も異なる。それが無意識のうちにものの見方や考え方にさまざまな影響を及ぼす。
・これは科学の世界にも当てはまる。科学者が特定の想定や暗黙の理論をもとに実験や検証を行い、それが新たな発見を妨げていることは少なくない。
③ 与える姿勢
・多様な社会において他者とのコラボレーションを成功させるには、自分の考えや知恵を相手に共有しようという心構えが必要である。
・与える人は多様性豊かなネットワークを構築できる。
・しかしながら他者との接し方が重要である。それは出来る限り自分のために価値を得ようとするのか、それとも他者に価値を与えようとするかである。どうやらこの選択が、成功を収められるかどうかに圧倒的な影響をもたらすようである。


 自分とは異なる人々と接し、馴染みのない考え方や行動に触れる事こそが価値である。

 

動的平衡とシェーンハイマーの実験

 生物の場合、外から物質を摂取して体内の一部とし、不要物は体外へ排出する。物質の流れが外(食べ物)→内→外(排泄物)と流れが一方的で循環していない(生態学的な大きな視点では循環しているが)。このような流動的な平衡状態を「動的平衡」と呼ぶ。
生命が動的平衡の状態であることは、ルドルフ・シェーンハイマーの実験によって確認された。

 
 ルドルフ・シェーンハイマー(米:Rudolph Schoenheimer、1898年5月10日 - 1941年7月11日)は、ドイツ生まれのアメリカ合衆国の生化学者。代謝回転の詳細な調査を可能にする、同位体を用いた測定法を開発した。
 
シェーンハイマーは成熟したネズミに重窒素(窒素の同位体)で標識したロイシン(アミノ酸)を含む餌を与えた。成熟したネズミは体を大きくする必要がないので、摂取したアミノ酸は生命活動のためのエネルギー源となることを予想していた。つまり、重窒素を含むアミノ酸は分解され(エネルギーが取り出され)、尿や糞として排泄されることの予測を立てていた。
しかし、実際の結果は、尿・糞として排泄されたのは投与量の29.6%だけであった。重窒素の半分以上の56.5%は体を構成するタンパク質の中に取り込まれていた。さらに、取り込み場所はありとあらゆる部位に分散されていたのである。しかもその多くは腸管や腎に多く取り込まれていた。
この実験の間にネズミの体重に変化はなかったことから、全身のタンパク質が恐ろしいスピードで破壊され、また新たに合成されていたことがわかる。実際にネズミの全身のタンパク質は3日で半分が新しいタンパク質に入れ替わることが確認されている。
 
生命にとって重要なのは、作ることよりも、壊すことである細胞はどんな環境でも、いかなる状況でも、壊すことをやめない。むしろ進んで、エネルギーを使って、積極的に、先回りして、細胞内の構造物をどんどん壊している。なぜか。生命の動的平衡を維持するためである。
秩序あるものは必ず、秩序が乱れる方向に動く。宇宙の大原則、エントロピー増大の法則である。この世界において、もっとも秩序あるものは生命体だ。生命体にもエントロピー増大の法則が容赦なく襲いかかり、常に、酸化、変性、老廃物が発生する。これを絶え間なく排除しなければ、新しい秩序を作り出すことができない。そのために絶えず、自らを分解しつつ、同時に再構築するという危ういバランスと流れが必要なのだ。これが生きていること、つまり動的平衡である。
    以上、Manabu-biology.com  より引用
 
 
生命は入れ替わりである。
人間の消化管は2-3日、筋肉は2-3週間程度、血液は6ヶ月程度で入れ替わる。
1年で細胞はほぼ入れ替わる。さらに骨でさえ、2年から2.5年もすれば全て入れ替わる。
自分というものはない。

 

「どう生きるべきか」実践者

この先をどう生きるべきか、を実践する方々、決して同じ方向を向いているわけではないが、自らが行動している30〜40才前半の若手。

今後も注目していきたい。

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落合陽一 1987生まれ
筑波大学准教授、メディアアーティスト


斎藤幸平 1987年生まれ
大阪市立大学准教授、哲学者


森田真生 1985年生まれ
数学者、独立研究者


船橋真俊 1979年生まれ
ソニーコンピュータサイエンス研究所 シニアリサーチャー
一般社団法人シネコカルチャー代表理事


桐村里紗 1980年生まれ
内科医、Tendai株式会社代表取締役


小倉ヒラク 1983年生まれ
発酵デザイナー

1万年目の農業

ソニーコンピュータサイエンス研究所 船橋真俊さんが主宰する協生農法

それは自然との共生による農業の情報産業化、これこそが日本が目指しそして世界をリードすべき新たな産業の予感がする。

https://youtu.be/2kOezQhbMOI

 

 

健康 →食 →農業 →生態系拡張

 新型コロナは時間の経過とともに弱毒化していくが、同様の新たなパンデミックに備え、今後、健康をどう維持していくのか、コロナはそのメッセージである。そこで、
健康 → 食 → 農業 → 生態系拡張
の旅に出た。

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この本は多角的観点から様々な気づきを与えてくれた。
以下は一部抜粋


人は森であり、腸内に土を持つ
木を見て森を見ず、ではなく、森を見て、土を見る。
人間にとっても、発生学的に言えば、受精卵から最初に発生する臓器は、脳でも心臓でもなく、腸である。
むしろ第一の脳は腸ではないか。
食、消化器官、腸内細菌を含む常在菌、そして免疫。消化器官で人は自然につながっている。
 人を含め、消化管を持つ動物にとって、外界とのエネルギー交換に必須の臓器が消化管なので、まず生命維持には、消化管ありき。脳は二の次です。 そして、生態系の連続性は、食を通して保たれているので、食はとても大切な行為なのです。日本人が「いただきます」という時、それは「御命を頂戴いたします」という他の生命への感謝と死への弔いを意味していることはご存じのとおりです。 そして、「食べること」は必ず、外界にインパクトを与えますから、巡り巡って、環境問題と接続せざるを得ないのです。
ちなみに、インプット(摂食)が過剰でどんどん肥大しているのが、生活習慣病の状態です。食べすぎ、飲みすぎなのにエネルギー燃焼をしないため、病気になります。 心も同様で、あまりにも情報過多で処理が追いつかず、アウトプットが少ないと、鬱滞していきます。 現代人の身体と心は、インプット過剰による循環停滞によって病んでいるといえます。 ではどうすれば良いか? インプット(摂食)を減らし、プロセス(消化・代謝)を休めて回復させ、アウトプット(排泄)を増やす。食べ物や情報の粗食化、ファスティングが身体にも心にも有効なのです。
 人の身体の細胞の数は、かつては60兆個という推定値もありましたが、近年は37兆2000億個とされています。 それに対して、人の常在細菌は大腸を最大に100兆個を超えるとされています。人の持つ遺伝子の総和と常在細菌の持つ遺伝子の総和を比較すると、圧倒的に常在細菌の持つ遺伝子数の方が多いことになります。 ジョンズ・ホプキンス大学が『ネイチャー』誌に発表した、2018年時点での人の遺伝子の数は、2万1306個。一方で、早稲田大学が調査した日本人の腸内細菌叢の遺伝子数は、約500万個。人の遺伝子の約200倍です。さらに日本も含めて12カ国を調査したところ、少なくとも1200万の遺伝子が見つかったのです。約500倍です。しかも、人の遺伝子の個人差は、ごくわずかですが、微生物の遺伝子は、非常に多様です。ですから、人それぞれで全く違う常在細菌叢の遺伝子は、超多様となります。当然、人の遺伝子に腸内細菌叢の遺伝子も加えた、超生命体の遺伝子の総和は、超個性的なのです。


食物繊維は最強のスーパーフード──食べ物のカスではない!
 短鎖脂肪酸を生み出す細菌を含む、腸内の有用菌が大好きなエサ・ナンバー1は、食物繊維。これに尽きます。 少し前までは、人間の能力では分解できないので「食べ物のカス」などと言われていましたが、汚名返上。今や最強のスーパーフードとして立場逆転です。単なる、便秘解消フードでもありません。 食物繊維には、水に溶けやすい水溶性と、水に溶けにくい不溶性がありますが、特に有用菌のエサになるのは、水溶性です。 水溶性食物繊維の代表食材は、ワカメ、昆布、寒天、海苔などの海藻のヌルヌル成分であるアルギン酸。りんごやプルーンなどの果物に含まれるペクチン。こんにゃくのグルコマンナン、ゴボウや菊芋などのイヌリンなどです。 特に、日本人は、海苔やワカメの恩恵を受けやすいことも分かっています。 早稲田大学服部正平先生らの研究チームの解析で、約90%の日本人の腸内細菌は、海苔やワカメの食物繊維を分解することができる酵素遺伝子を持っていることが分かりました。その他の11カ国の人では、0~15%にとどまったとのことです。
 今日から、食卓には海藻は必須です。 ちなみに、海苔は焼くと誰にでも消化できるようになりますので、焼き海苔は万人にマル。焼き海苔100g中の約3~4割が、水溶性食物繊維です。自然に生えたものを収穫するだけですから、環境負荷も極めて低く、人にも環境にも優秀な食材です。 不溶性食物繊維の方は、エサにはなりませんが、フカフカの寝床になることで、腸内細菌を養います。便のかさが増し、腸を刺激するので、腸内の腐敗によって発生した有害物質を押し流す働きもあります。 不溶性食物繊維を含む代表食材は、雑穀類、豆類、キノコ類、ゴボウやブロッコリーなどの野菜といったところです。


12種類の作物と5種類の動物で75%のエネルギー──生物多様性の回復の必要性
 地球上の植物の種類は25万種、生物は137万種類、脊椎動物は6万6000種類ほどいるにもかかわらず、農業の起源以降、人が「これは食料になる」と選定したものだけを農業や畜産で増やしてきました。 その結果、現在は、世界のエネルギー摂取量の75%が、たった12種類の作物と、たった5種類の家畜動物で占められており、このことが生態系をアンバランスにし、また生物多様性の減少に大きく関わっています。
プラネタリーヘルスダイエットでは、生物多様性を回復するために、単一の作物だけを田畑に植えるモノカルチャーに依存した食糧需給から離れ、農場や野生に存在する野生種や在来種なども含めて、何千種、何百万もの品種の動植物を食料として取り入れ、農業による生物多様性を確保することを提案しています。


協生農法 - 「生理学」ではなく、「生態学」からのアプローチ
 多くの農法は、「特定の作物をいかに大きく育て、収穫量を上げるか」を重視します。これが、生理学的な発想です。 たとえば、トマトの栽培のためには、トマトに最適な環境を整えるために、生理学的に不要と判断される要素を排除する必要があります。アメリカの大量消費を担う工業化された大規模農業の畑では、見渡す限り同じ品種の作物が並び、土を見ると、草一本生えていないという光景を目にします。 これはまさに、砂漠のような土地に作物を育てるようなものです。 日本の農村でも、規模は違えど、同じような光景を目にします。 特定の部分を最適化することを目指すと、全体のバランスが崩れ、生態系は崩壊します。
 一方、協生農法は、生態学的な視点に基づき、「生態系全体を最適化して、全体でいかに生産性を上げるか」を重視し、さらに人の活動により、自然状態以上に多様な「拡張生態系」を構築することを目指します。 単一の作物の収穫量ではなく、全体で生産性を上げていきます。規模にもよりますが、数十から数百の作物や、収穫を目的としない植物をも同時に共生させます。 雑草にも、窒素固定や有機物の提供などの役割があります。 害虫と呼ばれるアブラムシが発生したら、ナナホシテントウが来てどんどんそれをエサにします。それによって土壌成分のバランスが向上します。 何かの病気が発生し、自然に立ち枯れても、その種が増えすぎることなく全体のバランスをとるためのプロセスと判断できます。 病気も、あくまでも理由があって起きる現象の一つで、どこかに弱ったところがあっても、全体でバランスをとり、ホメオスタシスを維持する方向に働きます。 協生農法は、このように、起きた現象を部分的な善悪で判断しません。それは、生態系というシステム全体としての機能を信頼しているからです。
 この違いは、医学・ヘルスケアの分野でも同じです。 従来のこの分野は、人の生理学を重視し、人という部分を最適化することを目的としてきました。そこに、他の種や環境と作用し合う生態学的発想はありません。 さらに、本来、全体がネットワークとなり、相互に影響をし合っている人の「身体」と「心」を分断し、身体のパーツを分断し、どんどん細分化していきました。 局所については細部まで観察できましたが、視野狭窄になってしまったことが問題です。どこか特定の臓器に病気ができると、ネットワーク全体の歪みの原因が何かを考えることを忘れて、その局所の「悪」と捉え、局所をターゲットにした薬を投与したり、切除したり、臓器ごと取り換えたりします。 ところが、近年、常在細菌の世界が明らかになり、常在細菌を通して人の心と身体が再接続し、人も生態系全体の一部であったことを科学によって再認識した時から、ようやく医学も、生態学的に全体を捉える時代になりました。 農業や医学だけでなく、人が関わるあらゆる分野は全て、「リダクショニズム(要素還元主義・細分主義)」をもとにした近代科学によって裏打ちされたことで、ことごとく分断されながら、同じ問題で行き詰まっています。 持続不可能な世界のあらゆる問題の解決は、次元を一つ上げて分断を統合し、共通言語を持ち、共通のネットワークを土台にすることで可能になるでしょう。


ドローダウン─地球温暖化を逆転させる100の方法 ─「日常の食」こそが最大の環境インパク

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 環境についての様々な研究が進む一方で、では具体的にどうしたら良いのかというアクションについての答えを、研究者も持ち合わせていなかったのがこれまでです。 それを踏まえて、190人の専門家らによる国際的なグループが、具体的で効果的な100の解決策をまとめたのが、『ドローダウン』(ポール・ホーケン編著、山と溪谷社)です。ドローダウンとは、温室効果ガスがピークから減少に転じるポイントのこと。それを目指すために、今すぐに何ができるのか? 最も効果的で、今すぐ誰でもできるのが、食です。 温室効果ガスといえば、化石燃料を使ったエネルギー問題と思いがちですが、環境活動家ポール・ホーケンらによるプロジェクトメンバーが総力を上げて調べ上げた結果、日常の食こそが、最大のインパクトであることが示されました。 当然、その他の分野も同時に、社会総出、世界総出で取り組むことが必須ですが、一口の肉やパンの背景に、どれほどの犠牲を払っているかを、想像しないことは許されない時代なのです。
そのために伐採される森林と、農薬や化学肥料の使用による砂漠化の問題もあります。家畜由来のメタンガスの問題もあります。輸送や貯蔵などの過程にエネルギーも必要です。さらに、莫大な無駄である食料廃棄の問題は、温室効果ガス削減へのインパクト第3位であると同時に、削減の実現可能性の高さも上位です。 食分野の17の解決策を合わせると、321・93ギガトンの温室効果ガス削減になり、なんと、第1位。第2位は、エネルギー分野で、総合すると246・13ギガトンです。 食料廃棄の削減と植物性食品を中心にした食事は、私たちが日常的にも取り組むことができますが、これら2つを合わせると、136・64ギガトンもの削減になります。 ちなみにこれは、自動車を電気自動車に変えることでの削減量、10・80ギガトンの10倍以上です。環境問題といえば「プラスチック」というイメージがありますが、プラスチックをバイオプラスチックに変えることでの削減量、4・3ギガトンの約30倍です。 電気自動車でコンビニに乗り付け、レジ袋を断りつつ、牛丼弁当を買ったとしたら、プラスマイナスどっちでしょう?


 タンパク源としての肉牛の場合は、放牧しているのは16~18%で、なかなか国産のグラスフェッドビーフは店頭に並びません。 しかし、少数ながら、日本でも牛の放牧風景を見ることができます。 たとえば、島根県隠岐諸島知夫里島では、600人の人口に牛が500頭。牛はのびのびと自由に暮らしており、車で走ると寝そべった牛に道を塞がれるという愉快な体験ができます。隠岐諸島は、その独特の地質や生態系から、ユネスコ世界ジオパークとしても認定されています。人の営みと自然とが共生する風景は、観光の目玉として地域の活性化にも一役買っています。 一方で、世界的には、過剰な放牧が土壌の劣化と風化、果ては砂漠化につながっています。 特に、たくさん牧草を食べる牛を飼うには、広大な牧草地が必要です。地球上に暮らす全員が、牧草牛を食べようとしたら、地球の全ての土地を牧草地にしても足りないほどです。土地の狭い日本で牧草地を広げることは困難です。 同じ農地面積(1㎡)で得られる各食品のタンパク質の量を比較すると、大豆が最も効率が良く、約60g/㎡、昆虫が約30g/㎡、卵・鶏肉が約10g/㎡、豚肉が約5g/㎡、乳製品が5g/㎡未満、そして、牛肉は、0・4g/㎡で、牛肉は面積当たりの生産効率が最も悪い方法と試算されました。


 窒素やリンは、元々自然な形で地球上を循環していたものですが、爆発した人口を養うために効率化した近代農業で、人為的に窒素とリンを環境にばらまいてしまったのです。 欧州環境庁(EEA)の2020年の発表によると、地球の耐用量を超えて、どちらも2倍以上が環境に存在してしまっています。土地から水に流れて、河川から海へ。日本全国、世界各地で、これらの過剰な栄養が赤潮を発生させるなどして、水の中が酸欠状態となり、水の生態系が崩れています。土壌汚染や大気汚染につながることで、気候変動や環境全体の生物多様性の減少にもつながっています。問題は、一連です。


地域で農をシェアするCSAシステム 

 農業には不作がつきものである上、収量の安定しない農法は、農家のリスクにもなります。 そこで、生産者と消費者が連携し、前払いによる農産物の契約によって相互に支え合う地域支援型農業(CSA:Community Supported Agriculture)が注目されています。1980年代にアメリカで始まったとされ、今では、欧米を中心に世界的に拡大しています。 消費者の安心・安全と、農家の経営安定、環境に負担のない農業の持続可能性を実現、コミュニティ形成、など地域全体のメリットになります。 日本でも、まだ少数ながら、CSAを導入する農家があります。新規参入者のうち3割がオーガニック農法に取り組んでいる状況ですが、こうした経験の浅い農家にとって、チャレンジできる土台になっています。新しい品種にも挑戦しやすく、消費者の側には、届いた段ボールをびっくり箱のように開く楽しさもあります。さらに、CSAの特徴は、消費者が農業に積極的に関わることができることです。土に触り、食や環境の生きた学びができるので、お子さんを持つ家庭には特に良いと思います。 ただし、しっかりと根付かせるためには、サポート体制や連携の構築が必須です。